発毛サロンの体験談
ただ、右のように体の免疫が落ちたからといって、ただちにがん細胞の増殖を許すという確かな証拠はない。
ただ、免疫の落ちた状態が長期にわたってつづくと、眠っているようながん細胞の芽(がん化の進展、がん細胞の増殖)が出やすくなると考えることは差し支えないであろう。
このことは間接的ながらいままでの多くの事実から示唆されている。
がん細胞の増殖を許す免疫とは具体的にどういうことなのだろうか。
生体にはTリンパ球(その中にはいろいろのサブセットがある)の働きを主体とする複雑ながら緻密な免疫系があり、外界の刺激に対し巧妙に対応している。
サイトカインネットワークといって、われわれの生体はリンパ球から出される免疫活性物質(IL2、IFNガンマ、TNFアルファなど)と免疫抑制物質(TGFベータなど)の相互のバランスのうえに成り立っているが、外界からの刺激(たとえばインフルエンザなど感染症とか強いストレス)があると、ときに免疫活性物質の産生は低下し逆に免疫抑制物質の産生か優位に立ってくる。
そうすると皮膚反応テストは陰性化し生体の免疫は全体として低下し、がんの増殖を許すことになる。
つけ加えていえば、生体の免疫力の変動には個人差がある。
がんにかかわる免疫の落ちやすい人とか、逆に回復の早い人がある。
このようなことが何によって決められているのかはっきりした証拠はないが、おそらく生体の遺伝的素因との関係があるのだろう。
免疫と一口にいっても全身的な免疫もあるし、がん細胞のできる局所組織の免疫もある。
参考までにいえば発がん作用をもつものは本来すべて免疫抑制作用をもっている。
化学物質にしてもウイルスにしても放射線にしても、発がん作用のあるものは程度の差こそあれ生体の免疫を弱める働きをもつものである。
さて、免疫の弱った生体から、あるいは局所からがんができやすいとすると、その弱った免疫を正常に戻してやればがんが予防できるはずである。
この「免疫予防」にはどんな方法があるかというと、まずは免疫を落とした条件を早く取り除くことである。
重篤な風邪でもインフルエンザでも早く治すことであり、タバコ、アルコール、食べ過ぎをやめ、ストレスがあれば早く解消し立ち直ること、疲労があれば十分な休養と睡眠で疲労をなくすることである。
また快食・快眠・快便で体調をととのえることである。
そうすれば結果的に免疫は本来の正常状態に復帰する。
免疫を落とした原因を取り除くだけでなく、免疫力を人工的に回復させてやろうとの試みがあり、そのための食品もある。
各種ビタミンの豊富な食品は免疫促進作用があるし、ある種の牛ノコ類など一部はすでに健康食品としても売られている。
素人には扱えないが、PSKなどの免疫療法剤(一種の抗がん剤)も十分に免疫を促進し高める作用をもつ。
現にそうした薬の一つN・CWSは戦時中に瀬戸内海の毒ガス工場に働いていた人達に好発した肺がんの予防に試みられたことがある。
健康体の正常な免疫をもっと高めてやったらどうなるか。
直接の証拠はないのだが、これが一つの刺激になって逆にがんの原因にもなりかねない。
要は落ちた免疫はもとに戻すだけでよいのであって、欲ばりは元も子もなくすようである。
「免疫予防」と「化学予防」は似たもの同士である。
たとえばアスピリン、スリンダックなどの非ステロイド系の抗炎症剤は大腸がんの予防に有効である。
この作用をもたらすメカニズムは大腸の粘膜のPGE2の働きを抑えようということだから免疫予防といえるし、また使うものは化学物質だから化学予防といってもいい。
二つの意味をあわせて「免疫化学予防」ということもできる。
また免疫予防は広義の化学予防の一つと考えてもよい。
話は変わるが、むかしからがん細胞に対して身体の免疫が本当に働いているかどうか議論されてきた。
免疫は異物を排除しようとする力である。
だが感染症が外来からの細菌、ウイルスによって起こるのと違って、がんはもともと自分自身の細胞なのでがんに対する免疫ができにくいのも確かである。
だからがん細胞は免疫の監視の目を逃れ、それによって叩かれることなく生体内に増えてくる。
ところが一方に突然変異によってつくられた新しいがん特異抗原が細胞膜面にできてくるので、これが目印になって生体のTリンパ球などの働きによって叩かれることも実証されている。
新しい「免疫療法」の試みがいま進められており、一日も早い成功が待たれるのである。
ただ、これが「免疫予防」への期待に結びつく可能性はどうだろうか。
なお未知の生体―その解明かほしいがんウイルスが感染しても必ずがんになるとは限らない。
実際にがんになるのはその一部にすぎない。
というより、がんウイルスの感染をうけてもがんにはなかなかならないのである。
これはどうしたことだろうか。
いくつか実例を述べてみよう。
HTLVウイルスは成人T細胞性白血病(ATL)を起こすウイルスであるが、多くの専門家はHTLVの感染者(抗体陽性者)が生涯をとおしてATL白血病になる生涯罹患率は一〇〇人のうちわずか一人にも満たないのではないかという。
有名なバーキットリンパ腫や鼻咽頭がん(ほかにホジキン病、非ホジキン悪性リンパ腫)をつくるEBウイルスにしても、感染者一〇〇〇人のうち発がん(生涯罹患)は一人以下にすぎない。
また子宮頚がんの原因と考えられるパピローマウイルス(16、18型)もがんをつくる可能性は一般にかなり低いと考えられる。
肝炎ウイルスによる肝がんの危険率は比較的高いほうだが、それでもB型肝炎ウイルスは感染者一〇〇人中生涯に一人、C型肝炎ウイルスは感染者一〇〇人中一〇人が肝がんになるのではないかという(いろいろの意見があるなかでのK大O教授の見解)。
がんに関係のない麻疹ではどうだろうか。
麻疹ウイルスの感染者はおそらく一〇〇人のうち一〇〇人がその年のうちに麻疹を発症する。
HIVウイルスの感染者は一〇〇人のうちおそらく五〇人以上はいずれエイズを発症する。
と考えるとヒトの「がんウイルス」がいかにがんをつくりにくいかがわかる(それでもがんウイルスと呼ばれている)。
ということは、がんウイルスが感染してもがんになっていくのはほんの一部であり、大部分の人はがんにはならないですむということなのである。
試験管のなかと違って、ヒトの身体にはがんウイルスによるがんの発生を抑える仕組みが何かあるからであろう。
ここにもがん化の進行に対する生体の遺伝的な関与の違いがあるのだろうか。
残念ながらその解析はほとんど行われていない。
EBウイルスを例に述べてみよう。
EBウイルスの感染をうけたBリンパ球はリンパ球細胞の核内だけでなくその膜面にもエブナ抗原という目印になりやすい抗原をつくるが、この抗原は生体の免疫(とくにCTLといわれるがん細胞を殺すリンパ球)の攻撃のターゲットになって殺されてしまう。
だからエブナ抗原をもった細胞は生体免疫に叩かれることによって、野放図に増えることはないのである(ここは化学物質による発がんとは違う)。
ウイルスによって起こるがんは、このように細胞の膜面に生体の免疫によって攻撃される目印抗原ができやすいということで、これががんウイルスに感染してもがんがなかなかできにくい理由の一つであるとも考えられるが、それ以外のことはほとんどわかっていない。
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